明けがたの夢

恋愛小説!女目線!推敲ゼロ!(笑

「恋愛小説を書いて」とリクエストがあり、久しぶりに 書き始めた。いやー!ほんとは「桜−早すぎる春−」を 一年以上放置しているので、それどころじゃないのだが!! そして私の書く「恋愛小説」は「恋愛小説」にならない(涙 10代の6年間、私は2冊の週刊…

小説の連載が一年止まる

一昨年の12月、そこそこ盛り上がったところで、それ以降 小説の連載が止まっている。 一番の原因は体調。昨年一月から三月まで自動車学校に 週一通っていた。たいていまる一日つぶしていた。 もちろん、いまさら自動車の免許を取ろうとしたのではない。 誕生…

ここ夏文庫

ということで。sapさんからのご提案もありましたので 「ここ夏のブログ」を「ここ夏文庫」に改名いたしました。 どうも「はてな」じゃらちあかん、と思い、創作物は全部 FC2にコピーしたのですが、なんですかねぇ…「はてな」に慣れると 他のブログの使いにく…

桜、早すぎる春 は続行します

カテゴリー「明けがたの夢」は自作小説です。3月に病気が悪化 してから、初の(爆)恋愛小説「桜、早すぎる春」の記載が 滞っています。 しかしストーリーはだいぶ先まで組立っていました。 主要人物がもう一人登場する予定ですし、既出のキャラたちも 既に…

会話

「だいじょうぶだよね?」 不安げに彼女は問うた。 「だいじょうぶだよ」 彼女の瞳をチラっと見てから彼は答えた。 「だいじょうぶだよ。 君が僕のことを呼ばない限りね」 彼女は閉じていた瞳をゆっくり開く。 ココロから彼を抹消する。それが自然なのだ。 …

桜、早すぎる春 -27-

ビールが前に置かれると善文はそれをごくごくと飲んだ。 詩織も真似してごくごくと飲んだ。やはり喉ごしが美味しい のは一杯目だけだな、と詩織は思う。 善文はグラスを置くと、その長い足を組んだ。 「佐倉さん、彼氏います?」 「想像に任せます」 これは…

桜、早すぎる春 -26-

しばらくそうしていると、善文は両腕をぐーっと上げて 体を伸ばしてから、ソファーに座り直した。 「なんか、すみません。悲しい話題になっちゃいましたね。 本当はあなたと楽しい話がしたかったのに」 詩織もはっとした。シロクマの話ときいて、熱くなりす…

桜、早すぎる春 -25-

「シロクマは雑食なんです」 「クマ類はほとんどそうですよね?」 善文はまた綺麗な指を顎にあてて撫で始めた。詩織は コクンとうなずいて続けた。 「さっきも話したように、夏の間は狩りをするんです。 アザラシとかセイウチとか。でも今はセイウチは難しい…

桜、早すぎる春 -24-

「地球温暖化かあ」 豆乳リゾットを皿に取り分けながら、善文は呟いた。 「僕は何も知らないなあ。考えたこともない。そんなふうに 大きなテーマをもって番組を企画したこともない。 はい」 一枚目の皿を詩織に回すと、善文は二枚目の皿にも リゾットを盛っ…

桜、早すぎる春 -23-

詩織は今日はその問いに素直に答えた。アフリカに 行ったこと。東都大学の獣医大学院に通っていること。 それはこれから日丸テレビが作ろうとしている番組に なんの影響もないからだ。アフリカが旱魃に苦しんで いること、北極の氷河が溶けていること。そん…

桜、早すぎる春 -22-

「ふうん、共食いですか」 善文は綺麗な指で顎をさすりながら呟いた。 「それが食糧難のためにされるとしたら、悲劇ですね」 「ただの食糧難じゃないんです。本来の餌のセイウチとか アザラシとか、そういう動物は近くに沢山居るんです」 「動けなくなったか…

桜、早すぎる春 -21-

四人はかわるがわるお互いの顔を見た。彩は都会派の おしゃれなお姉さんだし、雅は良い所のおぼっちゃまに 見える。大介は落ち着いた大人だし、詩織はよく年齢 不詳だと言われる。詩織以外は獣相手とは言え医者な わけで、どこかくだけた感のある詩織とは雰…

桜、早すぎる春 -20-

三人の学生たちは資料室の中央にある大きな机の上に 北極圏の地図を広げていた。彩は机の上に身を乗り出して 食い入るように地図を見ている。 詩織と大介は学生たちから少し離れた場所に座って、 紅茶を飲み始めた。京が 「あれ?結城さん。俺達の分はないん…

桜、早すぎる春 -19-

部屋には高橋京という大学院2年生と、同じく2年の 高木彩と一年生の柏木雅が居た。三人とも既に顔なじみ だ。このうち京と雅が大介と同じようにシロクマの生態を 追っかけており、彩はジャイアントパンダが専門だ。 しかし彩も、ここ数年になって急に数を…

桜、早すぎる春 -18-

詩織がその研究室を訪ねたのは三回目だった。 東都大学獣医学部大学院、野生動物科山口准教授室。 大学や動物を飼育している教室は東京郊外に校舎を持って いたが、山口准教授室は水道橋に近い東京の真ん中の ビルの12階にあった。 ビル全体が清潔で明るく、…

桜、早すぎる春 -17-

「そんなにCGやりたければ、あっちでMGMかユニバース・ ピクチャーズに入れば良かったのに」 「そういうおとぎ噺系じゃなくて、歴史の復元みたいな ものをやりたいの!」 「そんな大きな映画会社じゃ入るのも大変でしょうしね」 詩織はしれっと言ってみた。…

桜、はやすぎる春 -16-

あ、この子、私に嫉妬してる。詩織は単純にそう思った。 相手の剣幕にも驚くし、言葉が見付からない。 どういう関係、と尋ねられて答えられるような、大層な 関係でもない。だって会って2回目なのだから。 「この人は今日のシンポジウムに来てて」 「ヨシフ…

桜、早すぎる春 -15-

「このドクロですか?」 善文は指輪を指から抜くかのように上から撫でて、 「これ、お守りです」 とあっさり答えた。 「お守り?」 詩織は納得できない。左手薬指にドクロでお守りなんて 話は聞いたこともない。 「僕、去年、3回も事故っちゃったんですよ」…

桜、早すぎる春 -14-

詩織があんぐりと口を開けて驚いていると、善文は笑った。 公家のように「ふふふっ」と。詩織も笑った。この人、 前世は絶対に公家だよ。 その時、善文の携帯がピリリリっと鳴った。 「おっと」 善文はパンツのポケットに入れてあった携帯を取り出す。 「は…

桜、早すぎる春 -13-

「ないわけじゃありません」 善文は相変わらず足をぶらぶらさせながら言った。 「でも僕、デジタル制作担当なんです。何かひとつを 自分のテーマにする、ってことがないんですよ」 その目は少し寂しそうだった。 「デジタル制作、って、つまりハイビジョンで…

桜、早すぎる春 -12-

そんな二人のあいだに店員が割って入った。 「おからコロッケとビールでございます」 善文はおからコロッケの皿を受け取り、詩織は自分の前に ビールグラスが置かれるのを待った。 「おからコロッケ」 善文が皿を詩織の近くに置いた。 「食べてみてください…

桜、早すぎる春 -11-

「でもそうですよね。NHKが環境問題を取り上げるのは ある意味、義務だと思いますよ」 詩織は残りのビールを空にしながら言った。 「義務?」 「そうです、義務。NHKは災害時とか、絶対に特番で 状況報告をする義務がありますよね。それと同じだと 思うんで…

桜、早すぎる春 -10-

うふふ。詩織はつい笑ってしまった。 「今までそんなふうに言われたことありません」 それに善文が詩織のそんなところを気に入っていたとは 想像もしなかった。詩織もビールに手を伸ばした。 「でも、そう言えば」 ビールグラスを口元まで運んでおいて、詩織…

桜、早すぎる春 -9-

ドキっ。詩織は言葉の意味をとらえ損ねた。なんだろう。 どういう意味かしら。聞いてみたい。でも、なんだか怖い。 詩織は聞こえない振り、関係ないという振りをしたまま グラスを傾けていた。 「ふふっ」 善文はそんな詩織を見ながら頬杖を突いて、組んだ足…

桜、早すぎる春 -8-

え? 詩織は驚いた。あのときの誤解を謝ってもらおうとは 今さら全然思っていない。それよりも、詩織が偶然にで も善文の番組を成田空港で見たことを告白しなければ ならないのか、そのことで頭が混乱した。 善文は視線をすっとビールグラスに移した。 「や…

桜、早すぎる春 -7-

グラスにビールと泡は7対3。詩織はこれは譲れない。 この店の泡はやや少なめだが、合格点としよう。そんな ことを考えながら2口目のビールを楽しもうとしたとき、 善文がふふっと笑った。詩織はグラスに2口目をつけ ず、善文を見ながら首をかしげた。善文…

桜、早すぎる春 -6-

少し歩くと善文は通りの右側にある店を指差した。 「あそこです」 店は地下にあるようだが、メニューの看板が外に立って いた。洋風居酒屋という感じだろうか。 善文が先に階段を降り、店のドアを開けた。手を胸の 高さで折り、詩織に先に店に入るように促し…

桜、早すぎる春 -5-

「こっちです」 善文はバス通りまで出ると渋谷C.C.Lemonホール (旧渋谷公会堂)の角を右に曲った。なだらかな坂を 下り、NHK放送センターの西門へ通じる道にぶつかっ た。東の門は見学者がほとんどで、この西門がNHK 各社員の通用口であり、出演者の入口で…

桜、早すぎる春 -4-

詩織はホール中央辺りのもとの席に戻り、最後のパネル ディスカッションを聞いた。地上デジタルとワンセグ。 これらはどう動くのか。携帯電話は世界規模のサービス を実現できるか。 聞いていて、詩織は何でも出来るように思った。技術は 先へ先へと進んでい…

桜、早すぎる春 -3-

それから善文は詩織のほうをずっと見ながら歩いてきた。 詩織は動けなくなってしまった。誰かに「すみません」と 声をかけられて、詩織は自動販売機の前を譲った。 「ひさしぶりですね」 最初に声をかけたのは善文だった。 「地デジシンポジウム、いらしてた…