明けがたの夢

桜、早すぎる春 -2-

午後、二度目の休憩時間になった。 ここで退散する人が多いのか、詩織の左右に座っていた 人たちが一斉に席を外した。これ幸いと詩織も席を立った。 男性用トイレの前に長蛇の列ができていた。こんな光景は 滅多にないだろうと詩織は少し可笑しかった。帰っ…

桜、早すぎる春 -1-

4月。むさくるしい偉そうな年配たちに混ざって、 佐倉詩織はNHKホール一階の中央付近の席に座って いた。毎年、この季節に行われるデジタル放送のシンポ ジウム。参加するのは初めてだった。詩織にとって デジタル放送は地上だろうが衛星だろうが関係ない、 …

桜 -終-

夏。 詩織は人でごったがえしの成田空港出発ロビーに居た。 オリンピック観戦客で出国も入国も時間がかかる、と言われている。 そんな中、詩織たち一団は海外ロケを敢行しようとしていた。 TシャツによれよれのGパンを履き、赤いブラウスを腰に巻いて 詩織…

桜 -6-

翌朝、善文は普段のきりっとした殿様に戻っていた。白いシャツに 黒の皮パン、揃いのベストを羽織っていた。 「おはようございます」 凛と響く声。 昨晩の独り言は寝言ではなく、本当に8時に白川郷を発つ予定らしい。 詩織は昨晩、骨酒の余韻に浸って眠った…

桜 -5-

お膳を向かい合わせにして、善文と詩織は座っていた。 若い女将がやってきて 「お酒はどうしましょう?」 と尋ねた。 「ビールはお一人様に一本おつけしますけど」 「あ。じゃあビールだけでいいです」 善文が即答した。 女将はお膳の横に置かれた冷えた瓶ビ…

桜 -4-

荘川を出ると、車は川と崖に挟まれた2車線の細い道を辿った。 ここを抜ければ、合掌造りの村である。 この狭い道が白川を陸の孤島としたならば、この道は過去への タイムマシンだ、と詩織は思った。 善文も黙ってハンドルを握っていた。善文は白川郷へ行っ…

桜 -3-

車は国道156号を北上して行く。 「あの…」 詩織が沈黙を破って聞いた。 「田辺さんって、NHKグループの、どこですか?」 「EP」 NHK−EP。聞いて詩織はますます自分の不運を呪った。 NHKグループの中で最も素晴らしい作品を作る会社。 少なくと…

桜 -2-

男性は食堂の隅にちょこんと座っている詩織に目を向けた。 管理人室の方を指さし、首を少しかしげながら 「留守ですか?」 と問い掛けてきた。 詩織は男性がしたのと同じように、ちょんと首をかしげて それから左右に首を振った。 男性は詩織より2〜3歳若…

桜 -1-

「ったく、ふざけんじゃないわよ!」 詩織は公衆電話の受話器を乱暴に叩き切って、小声で呟いた。 管理人室でテレビを観ているおばさんには聞こえなかったようだ。 長良川沿いに、一軒ぽつんとある民宿。1階の半分が食堂になって いるが、午後2時すぎの食…

コナンな夢

朝、アドベンチックな夢をみたので、メモしておいた。 だけどこれを小説にする力量はとても無いので、公開してしまう。 - 風光明媚で有名な常夏の、小さな島「美女島(びじょがしま)」で異変が 起きた。 暖かい風が吹いたとき、何十人もの住人が突然死して…

少女がみた未来

その朝、少女は泣いていた。悲しそうな表情で、涙で頬をぐしょぐしょに 濡らし、キッチンの戸口に立っていた。父は少女を抱き上げて、 優しい声で聞いた。 「いったい何が、君をそんなに悲しませたんだい?」 少女は父の瞳をみつめ、さらに涙を流しながら語…