トイレで始まりトイレで終わった会話(ねずみ講の手口)

「最近、ふとっちゃったんだよね」何年か前、トイレの鏡の前で
同僚に話した。すると
「今週末、エステの無料体験に行くんです。一緒に行きましょう♪」
というので、エステなるものへ。


駅で同僚と待ち合わせたのだが、何故だか彼女、デパートに付き合え
と言う。
「オメガの時計がどうしても欲しいんです」
しかし時計売り場に行っても彼女の欲しい商品は置いてなかった。
取り寄せに2週間かかるとか。それでも彼女は注文した。
40万円。
腕時計しない派の私には無縁だが。


そしてエステなるものに行った。私は「痩身」が目的なはずなのに
なぜか勝手に「美顔」される。
「肌がすべすべになったのが分かりますか?」
「えーと、いつもからすべすべなんですが?」
「明日、洗顔してみたら分かりますよ。肌が突っ張らないんです」
洗顔で突っ張ったこと、無いんですけど」
説明してくれる女性はすっぴんだったようだが、顔中、吹き出物だらけ。
効果あるのか、この器械。


さぁ。そこで本命登場です。なんでもその会社の副社長だとか!
集まってた女の子たちが急に偉い人を取り巻き、うきうきムードです!
「この美顔器、30万円ですが、買いませんか?」
「要りません」
「なぜですか?顔も綺麗になるし」
「そんなに効果があるようには見えませんでしたが」
「じつはこれ、今日買ってもらったら、半額の15万円は同僚さんに渡します」
「へ?」
「ここなっつさんは、友達にこの美顔器を売ってください」
「は?」
「そうしたら、その友達はここなっつさんに15万円払います」
「・・・。」
「ここなっつさんはその15万円のうち、半分の7万を同僚さんに渡します。
 でも手元には8万残ります」
「。。。。。。」
「ここなっつさんが売った友達が、また友達に美顔器を売ったら、
 ここなっつさんは友達から、また7万円を受け取ります」


どう聞いたってねずみ講じゃねーかよぉ ( ̄□ ̄l||) 


私がこれはヤバイ、退散しよう、と思っているのを副社長は察知したらしい。
「ここなっつさん、夢はありますか?」
「ええ、あります」
「夢、叶えたくないですか?」
「叶えますよ、もちろん」
「それにはお金が必要ですよ。分かりますよね?」
「分かりますよ。でもそれは、ピラミッドの上に居る人だけですよね?」
「そうです。ピラミッドの上に立てばいいんですよ」


↑最後の2行は、もうモロお互い分かり合っての交渉だぁね。


「今日は帰ります。」
「同僚さんは、ここなっつさんと一緒に夢を叶えたいと思ってますよ」
同僚
「そうです、副社長がここまで熱心に話してくれるのは、滅多にないです。
 光栄ですよ、ここなっつさん。一緒に頑張りましょうよ」
「私は夢への近道がお金だとは思っていませんが」
「・・・そうですか」
「帰ります。今メモして頂いたそのピラミッドの紙、もらえますか?」
「いや、これは汚く書いたから。内容は分かったでしょ?」
副社長とやらは、そのメモをくしゃっと丸めて捨てた。


さあ、もう必死でダッシュ。これ以上、この場に居てはいけない!
うちに帰って速攻「消費者センター」に電話。
実被害に遭ってないので訴えることはできない、とのことだったけど、
ダミーでも買うなんてとんでもない


翌日、電話で正式にお断り。同僚が電話の向こうから
「副社長に失礼です、電話代わりますから謝ってください!」
なぬ? ( ̄□ ̄メ)


「あのさ、私は客なんだけど?なんで謝る必要があるの?」
ともかく副社長に代わりました。
「あなたは帰ってしまったら、絶対に買わないと思ってましたよ」
「ええ、そうでしょうね。あなたはこんなこと、いつまで続けるんですか?」
「言ったでしょう、ピラミッドのトップにいられるうちですよ」
鬼かよ!


数週間後、またトイレの鏡の前で同僚に会った。
「今日で会社辞めて、本格的にあっちのビジネス始めるんです♪」
「あ、そうなんだ??」
「ええ、もう会社は卒業です♪ここなっつさんも夢を叶えてくださいね♪」
「う、うん」


「あ、ところでさ?あのとき買ったオメガの時計、もう来た?見せて♪」
同僚、慌てた様子で
「ああ、あれは飽きちゃったからキャンセルしました」


・・・買う前に飽きるのかよ。。それも手口のひとつだったんだな。
あんた、友達、失うよ。ついでに夢とやらも。
3食運動付きの生活ができるかもしれないけどね。塀の中だけど・・・