桜の街道

たった3回しか会ったことのない、おばさん。
温かくてやわらかくて、心の芯から温めてくれる
ビーフストロガノフのような、おばさん。


弟を息子として迎えてくれた、おばさん。


おばさんに3回目に会ったのは、
もう、彼女の余命が一年も無いと分かっていたから。


自分の未来を知っても、なんの変わりもなく
穏やかな笑顔で話してた、おばさん。


私の本を読んで
「まるでメロディが聴こえてきそう!」と
言ってくれた、おばさん。


3回目の日、一緒に桜並木を通り抜けた。
街道の桜は、これでもかというほど誇らしげに咲いていた。
誰かが
来年はもう見れないかもしれない、と言った…


彼女が居なくなってから、一年が過ぎた。
おばさん、
今年も桜が 咲きました。