躾、なぜ怒れない?

行きつけのカフェは、週末はたいてい空いている。
が、今日はとても混んでいる上に、団体(5人以上)が多くて
カフェというカテゴリーにしては、あり得ないほどの
騒々しさだった。


特にひどかったのは、ご婦人二人と子ども三人の5人組。


ご婦人は友達なのか、自分たちの会話で盛り上がっていたが、
その声は特別大きいというものではなかった。
問題は子どものうちの二人。


一人はゲームだかに夢中で、むしろソッポを向いている感じだったが、
小学校1、2年生くらいかと思われる男の子と女の子がハンパない。


窓側のソファー席に座っている一人客の前の、空いてるソファーを
窓ガラスまで持って行って、飛び上がりながら外を歩く人を見て
大声をあげる。
一人が
「見えない」
というと、二人してソファーの肘掛けや背面に乗って大騒ぎ。
頭は、オシャレなペンダントライトを揺らしている。


近くの客たちは
「あれは危ない」と
みんな注目しているのに、婦人たちはお喋りに夢中。


ゲームをしていた、一番小さい幼稚園児くらいの子が
周囲の声に気付いたのか、お兄ちゃんたちが暴れているのを見て
「危ないよ!」
と叫んだ。


そこで婦人たちは初めて
「あんたたち、なにやってるの、やめなさい」と注意。
周囲の目にもようやく気付いたようで
「なにやってたの、全然気付かなかった」


気付かない、は嘘である。
ここがカフェでなく自宅であれば寛容できることだったのだろう。
子どもの非常識に無頓着になっていた、というのが現実。


席に戻された子どもたちは、今度は机を乱打するお歌を披露。
周囲の人が何度も顔を向けてアピールしても、
婦人たちは叱る様子がない。
そのうち自分たちの会話すら困難になったようで、ようやく
「うるさいから止めなさい」


口を塞ごうと思ったのか、今度は持参したペットボトル飲料を机に出し、
子ども二人で飲むようにと与えている。


通常、カフェで持参物を飲食するのは禁止である、乳児でない限り。


ところが普段から躾のなってないと思われる子どもたち。裏目にでる。
「面白い話、してあげる!ウンチ落ちてた!」
「犬のウンチじゃなくて?」
「ちがう!そのペットボトルの中に!」
「入ってないよ!」
「ねえ、オシッコ飲んでるんじゃないの?」


こんな会話を大声でしてるのに、自分たちの話題で耳に入らない、
婦人たちの日常が疑われる。


そのうち、いわゆる放送禁止の卑猥な隠語の連呼も始めたが、
それでも注意を全くしない。
偶然、休憩から戻ってきた様子の店長がその光景を見たが、
困ったような表情で食器を片付けたり、事務所に出たり入ったり。
店のコンセプトをぶち壊していても客は客、どう対処したものか
悩んでいたのだろう。


そして、男の子が飲み終わったペットボトルを床に置いて、
近くの他の客の椅子の背に両手をかけて、今にも宙に浮こうとしてるところで
窓側の客が立ち上がり、子どもから椅子を取り上げて婦人たちに言った。
「本当に、静かにしてください」


それをタイミングに、その5人組は帰って行った。
周囲の客への謝罪はなかった。


同じことは、たとえ子どもの多いファミレスでも許されることではないだろう。
なぜ、婦人たちは子どもを怒れないのだろう?
自身の躾がなっていないから、自身が非常識だから、
そう思わずには居られなかった。