励まされていたからこそ…

GPファイナルを怪我で欠場した高橋大輔選手(フィギュアスケート)は
オリンピック代表選考会に、不安そうな表情で出場した。
11月下旬に脛を負傷して、2週間安静にしていたそうだ。


高橋選手の怪我は、私自身の怪我への不安と重なってしまい、
余計につらい。


凡人だって2週間も動かさなかったら筋肉は痩せる。
オリンピック直前で2週間も安静だなんて、アスリートとして
どんなに不安だっただろう。
そして安静のあと、どれほどのリハビリの苦痛に耐えれば代表になれるのか、
どんなにか気が遠かったと思う。


高橋選手は前のオリンピックの前年にも大怪我をしている。
そこから這い上がって銀メダルを手にした。
だからリハビリのつらさは身をもって感じてるはずだし、今回の怪我の具合が
オリンピックに間に合うものなのか… 分かっているはず。
間に合うとすれば、地獄のような調整期間が待っていることも。


高橋選手のことだけど、その地獄に涙が出る。


日本人では初めて男子フィギアスケートでメダルを獲った選手。
そして今回は、羽生結弦選手、町田樹選手と、高橋選手を凌駕しそうな
国内選手もいて、オリンピックでのメダルも期待できそうだ。
だからもし、高橋選手に怪我を今より悪くさせなければならないほど
地獄の調整期間が待っているのだとすれば
「もう無理しないで」と言いたくなる。


しかし怪我の前までは、恐らく代表間違いなしというほど完成度を上げていたし、
怪我をしている現在ですら、やっぱりあの表現力は代表3名に入って欲しいと
思うほど素晴らしい。


いくら銀メダルの過去があったとしても、この4年、創り上げてきたものは
やはりオリンピックに向いていたと思うし、
なによりこの土壇場で、自己ベストが尽くせない高橋選手は
どんなに悔しいんだろ!
こんな試練は一度でいいじゃないか!と、ぶつける相手も分からず抗議したい。


最後のシーズンがこんなかたちで終わってしまうのは嫌だ。
そんな想いもあるかもしれない。でも次の4年は遠すぎる。
選考会で「これが今の全力」という、達成感と哀しみとを混ぜたような
高橋選手の笑顔が、フィギュアスケートファンとしてつらかった。


たぶん、他の国にも同じような境遇でオリンピックを断念した人は
沢山いる。高橋選手だけが特別不運なわけじゃない。


分かっているけど…
私もあと数ヶ月で職場復帰の期限となる。
怪我は治っていなくて…今はリハビリか安静かといえば、安静が重要。
しかしリハビリを始めなければ、復帰には間に合わないと医師が言う。
怪我が一生治らなくなる可能性もあるのに、あえて挑戦するのか?
地獄のような日々に、前向きに治療と挑戦と両立し続ける根性はあるか?


前のオリンピックに見事復活を果たした高橋選手に勇気をもらっていた。
だから今、なぜまた高橋選手を試練が襲ったのか? 自分のことのように
悔しいのだ。


悔しい。時間を止めたい。
でも、自分の身体(健康)より大切なものは無い。
どこが「限界」なのか…
せめて不安だけでも、すっかり忘れられてしまえたら。