火村と有栖

さて、私はソコソコの、有栖川有栖のファンではある。
未読書があるから、熱狂的ファンとは言えない。
しかし、サイン会に行ったことがあるくらいの、ファンではある。


生で、喋る作家を見る機会が、通常どれくらいあるのか知らないが、
有栖川有栖と言えば、テレビで楽しげに喋っている姿も見ているし
(ちなみに、安楽椅子探偵という深夜番組で)
私が火村シリーズを読むときに、作中に登場する有栖川有栖に想像するのは、
まんま、作家ご本人の姿だ。


だから現在放送中の「火村英生の推理」を観たときは、キャラのイメージが
崩壊した。
いや、これは絶対に俳優のせいではない。見た目があれだけ可愛いのに、
作中の有栖川有栖の雰囲気をよく出していると思う。


生作家も、作品中の有栖川有栖もそうだけれど、「有栖」は愛嬌たっぷり。
無邪気。お喋りのようで、実は違う。よく笑う。
ボケかツッコミかなら、ボケ。ツッコミさえ、ツッコまれる。


ドラマでも雰囲気で語られているが、警察にも捜査協力する
京都の大学准教授であり有栖の同窓生でもある火村という男は、
こともあろうか、有栖を自分のダメダメ代役に連れ回している。


有栖が、非現実的な推理を披露するとき、火村はそれを第三者的に検証し
「それは無い」と確信する。ダメ推理を列挙するのが有栖の役目。
(小説の中で、火村は有栖にはっきりそう言っている。最初は怒っていた有栖も
火村をギャフンと言わせる推理を狙うようになった)


「それは無い」どころか、有栖に散々推理させておいて、
「本気で言っているのか?」と冷やかに突き放す意地悪さまで持ち合わせている。


ゆえに、ドラマの火村も、イメージしていた火村とは違う。
作品中では、火村は超常現象なんか信じないし、センチメンタルな表現を
有栖がしようものなら、それこそ有栖はボコボコに叩きのめされる。
サンドバッグのように。
火村がみる違和感を、残像のように映像化するのは、それだけで
作品の火村とは別人のよう。


作品中の火村と有栖は、二人で歩いていると同情されるようなカサカサの
男性コンビ。死人ばかり相手にしてないで。たまには女性と…


ドラマの二人はフェロモンを撒き散らしすぎで、カサカサどころか
オアシス。w


どちらも創作物だから、どちらがより良い、とかは無いのだけれど。
作品のイメージと違い過ぎれば、それはもう別物、別ペアと見れば
こんなペアのホームズとワトソンが居てもいいかも?