M〜棋戦に思う〜

数年前、プロ棋戦にハマりました。
その際、プロ棋士と話す機会がありました。


プロの将棋指しになるには、男性の場合、
奨励会で対局して勝ち抜く必要があります。
しかも年齢制限があって、長くても25歳まで。


もし25歳を超えた場合でも、プロになるためには
奨励会の会員に連続して勝たなければなりません。


奨励会に入会するにも試験がありますが、ほとんどの人が
10代で入会、小学生か中学生か、という歳です。


その時には、プロの将棋指しになりたい!と思うほど
将棋が大好きなわけですが、
それで収入を支える覚悟があるか?と問われれば
「そんな冷静で現実的な覚悟は、出来るわけがない」と言います。


勝ち進んで、いざプロが見え始めて、ようやく経済的な
現実も見えてくる歳になる、というのです。


かつては、プロ棋戦の棋譜など一般人はそうそう見れなかった
でしょうが、今ではアプリを購入すれば、数百、数千の棋譜
見れます。
しかもデータベースになっていて、戦法ごとの流行りや
必勝法なども分かります。


とはいえ、アプリを使っても素人がプロに勝てないのは
いわゆる「一分将棋」という、考える時間が一分しか
無くなってしまってからの判断力の速さが段違いだから。


コンピュータの処理速度が上がって、いよいよコンピュータは
プロ棋士のこの判断速度を超えました。
人間であるプロ棋士は間違うことがあるけれど、
コンピュータはエラープログラミングがない限り
間違えません。
人間に勝ち目は無くなります。


プログラミングするのが人間なので、プログラマに想定漏れがあり
それが分かっていれば良いのですが。
…初手天元囲碁)なんてのにも、対応してるんでしょうねぇ


つまり、Mという棋士が、もしもアプリを使って指したというなら
人間はことごとく、コンピュータに負けたということです。
負けを認めたことになりますね。


M棋士の人となりは知りませんが、仮に使っていたとしても
それを話題にして欲しくはなかったというのが
個人的な感想です。


だって…人間同士が本気で戦っても、もうコンピュータ将棋より
面白くはない… そういうことでしょう?


人によっては、人間同士の駆け引きを楽しむのでしょうし、
現代はそういう人の方が多いのでしょうが、私のように
難解だからこそ面白い、と感じるような観客は
指し手が人間であることに、こだわりは無いのです。


まして、プロ棋戦を、初めからネットなどを通して棋譜再現の
アプリで観戦してた者にとっては。


イベントでコンピュータと戦って人間が負けてもいいけど、
タイトル挑戦者にもなれるほど、プロ棋戦を勝ち抜いてきたなんて
夢がないにも、ほどがある。


嘘でもいいから、M棋士には「やってない」と言って欲しいですね。